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世界初の鉄道用同期リラクタンスモータ(SynTRACS)

車両
東京メトロ13000系
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東京メトロは、日本で初めて地下鉄を運営した鉄道事業者として、最新の技術を積極的に導入し、鉄道業界を先導していますが、世界で初めて鉄道用同期リラクタンスモータの開発に成功しました。

同期リラクタンスモータシステム(SynTRACS)は、同期リラクタンスモータ(SynRM )と駆動用インバータ(フル SiC 素子採用)で構成されており、従来車両で用いられる誘導電動機(モーター)と比較して発熱損失が少なく高効率で、電動機出力を増加して回生ブレーキ領域を拡大し、消費電力量を低減することが出来ます。永久磁石同期電動機(PMSM)と比較しても、レアアースである永久磁石が不要となり回路もシンプルなものとし、省保守化を図ることが出来るのも特徴で、駆動用インバータにはフル SiC 素子を採用することにより、駆動用インバータの電流容量の増加による SynRM の高出力化と電力損失の大幅な低減を実現することも可能です。近年、開発された電車は、主電動機(モータ)に永久磁石同期電動機(PMSM)を搭載した車両が多くありますが、従来の主電動機(モータ)と比較して電力消費量が少なく、回転子の発熱が少ないため全閉構造となったことで、内部に塵埃が入らず、放熱用の部品が不要となり、低騒音化と主電動機(モータ)の小型化が可能になりましたが、弱点もあります。電車は加速すれば、線路の上を惰行で進みますが、磁石が入っている主電動機(モータ)は発電し、発電しているということは、ブレーキを掛けている状態でもあるので、その分だけエネルギー損失が生じてしまいます。そのため、エネルギー消費を抑えるには電力消費の多い主電動機(モータ)の改良は必要不可欠であり、一歩先を行く技術開発が必要でした。同期リラクタンスモータは有力候補の一つでしたが、鉄道向けに採用するには技術的な課題があり、鉄道車両では、可変速かつ高出力で駆動する主電動機(モータ)を搭載する必要がありますが、同期リラクタンスモータではその実現が困難でした。

9000系リニューアル編成

東京メトロと三菱電機が共同で開発を行い、配線や機器構成などを大きく変えずに容易に搭載が可能だったため、東京メトロ13000系44編成の1編成中2両に試験的に搭載して実証実験を行った結果、13000系と同様に制御方式がVVVFインバータ制御で、スイッチング素子にSiC素子を搭載した9000系リニューアル編成と比較して、約18%の省エネ効果が確認されました。定格出力は250㎾、重量が562㎏で、従来の主電動機(モータ)と比較して、出力あたりの大幅な小型化も可能になり、従来と同等の乗り心地や騒音レベルで、加減速性能はきちんと満たされていることも確認されており、世界最高レベルの効率を実現することが出来ました

東武鉄道80000系の中間車に組み込まれる東武鉄道60000系

2025年の春以降に就役する東武鉄道80000系に、本格搭載としては私鉄で初めて搭載することが決まっており、近年の輸送動向を踏まえ、80000系の導入に合わせて、東武アーバンパークラインで運転される列車の両数が、6両から5両に変更されることになっているので、大半の編成については、中間車には5両化によって、余剰となる60000系の中間車を80000系の内装に合わせた改造を行った上で、組み込むことが予定されています。

10000系

環境負荷低減に向け、東京メトロでは省エネ性能に優れた車両の開発を進め、近年、大半の路線で新型車両の導入が進んでいますが、他の1000両程度の車両については、B修工事と呼ばれるリニューアルを行う時期を迎えます。例えば、東京メトロが初めて開発した車両でもある10000系も対象になりますが、主電動機(モータ)を同期リラクタンスモータ(SynTRACS)へ換装することによって、18%以上の省エネ効果が見込まれます。さらにその先には、多くの路線で新造車両ラッシュを迎える時期が来ますが、今後、新造される車両とリニューアルされる車両の主電動機(モータ)には、同期リラクタンスモータ(SynTRACS)の導入を図ることになっています。

参考文献

「特集 車両技術 同期リラクタンスモータシステムの試験報告」渡部智也・友松白英・金子健太・山下良範 JREA2023年5月号一般社団法人日本鉄道技術協会令和5年5月1日発行

【CO2削減】東京メトロが挑む省エネ。車両床下にある世界初の技術  NEWS PICKS URL(https://newspicks.com/news/8232184/body/) 2023年12月27日参照

「~安心で持続可能な社会の実現と更なる省エネ性能の向上を目指して~ 世界初 鉄道用「同期リラクタンスモーターシステム」実証試験に成功 日比谷線 13000 系車両にて省エネ効果等を検証」東京メトロ2021年6月24日ニュースリリース

「世界初 鉄道用「同期リラクタンスモーターシステム」による省エネ化を実現」東京地下鉄株式会社・三菱電機株式会社2022年11月10日ニュースリリース

「温室効果ガス削減に向けて再エネ省エネ機器導入・省エネ運転に取り組んでいます」東武鉄道株式会社2023年3月10日ニュースリリース

「省エネ・CO2削減による環境負荷低減と快適性・サービス向上を両立します 2025年から東武アーバンパークラインに
5両編成の新型車両80000系を導入します ~環境にやさしく、沿線の皆さまに愛される車両を目指します~」東武鉄道株式会社2024年4月16日ニュースリリース

「東武野田線の新車は80000系・60000系脱車分を組込へ」4号車の5号車寄りURL(https://4gousya.net/forums/post/東武野田線の新車は80000系・60000系脱車分を組込へ)2024年7月10日参照

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