東武鉄道は環境負荷の低減と輸送力の効率化を図るために、2024年度以降にアーバンパークラインに、環境配慮型の新型車両を導入します。
この新型車両を導入することによって、環境負荷を低減するためにCO2の削減と省エネ化を図るとともに快適性とサービスの向上を目指すことになっており、近年の輸送動向を踏まえこの新型車両の導入に合わせて、東武アーバンパークラインで運転される列車の両数が6両から5両に変更されます。25編成が導入される予定で、中間車には5両化によって余剰となる60000系の中間車を組み込む予定で、一部の編成については全車両を新造することが考えられます。主電動機(モーター)は、本格搭載としては私鉄初となる同期リラクタンスモータを採用した車両推進システム(SynTRACS)を搭載し、このシステムは東京メトロと三菱電機が共同で開発した同期リラクタンスモーターシステムと同一のシステムで、同期リラクタンスモータ(SynRM )と駆動用インバータ(フル SiC 素子採用)で構成されます。従来車両で用いられる誘導電動機(モーター)と比較して発熱損失が少なく高効率であり、電動機出力を増加して回生ブレーキ領域を拡大し、消費電力量を低減することが出来ます。永久磁石同期電動機(PMSM)と比較しても、レアアースである永久磁石が不要となり回路もシンプルなものとし、省保守化を図ることが出来るのも特徴です。駆動用インバータにはフル SiC 素子を採用し、フル SiC 素子を採用することで、駆動用インバータの電流容量の増加による SynRM の高出力化と電力損失の大幅な低減を実現します。
蓄電池にはリチウムイオン二次電池 SCiB™と SIV 装置を組合わせた車上バッテリシステムを採用し、リチウムイオン二次電池 SCiB™は一般的な同型電池と比べて異常発熱や発火を起こしにくいため安全性が高く、2万回以上の充放電が可能な長寿命、急速充電性能、低温性能等の特長があり、列車の回生ブレーキにより発生する短時間の大電力を効率よく充電することが出来ます。二次電池と SIV 装置(補助電源装置)を組合わせることにより、列車の回生ブレーキで得られる電力を架線に戻すことなく自車の SIV 装置を介して、少ない損失で二次電池に充電するのが特徴です。また、蓄えた電力は列車の制御や空調などに使用する電力の一部として再生し供給することで省エネ効果を発揮し、SIV 装置故障時には二次電池から補助電力の供給を行うことで、列車運行を支障することのないように冗長性を確保します。
車両推進システム(SynTRACS)とリチウムイオン二次電池 SCiB™と SIV 装置を組合わせた車上バッテリシステムの搭載は現在、東武鉄道が行っている温室効果ガスの削減に向けた取り組みの一環で、系式と車両のデザインについてはまだ発表されていませんが、今後の動きに注目したいです。
参考文献
「東武 アーバンパークラインに5両編成の新型車両を導入します」東武鉄道株式会社2022年4月28日ニュースリリース
「野田線新型車両は「再利用」車を組み込み」4号車の5号車寄り
URL(https://4gousya.net/forums/post/野田線新型車両は「再利用」車を組み込み)2023年3月30日参照
「温室効果ガス削減に向けて再エネ省エネ機器導入・省エネ運転に取り組んでいます」東武鉄道株式会社2023年3月10日ニュースリリース
「世界初 鉄道用「同期リラクタンスモーターシステム」による省エネ化を実現」東京地下鉄株式会社・三菱電機株式会社2022年11月10日ニュースリリース