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通勤・近郊電車の標準仕様ガイドライン

車両
通勤・近郊電車の標準仕様ガイドラインを制定するきっかけになったJR東日本E231系
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従来の鉄道車両は、開発時に鉄道会社ごとの独自のコンセプトや設計により、車両メーカーに個別発注をしていました。会社によって車両の寸法や設備的条件など異なり、車両や搭載する機器の設計作業は系式が異なるごとに膨大な時間を掛けて行われる一方、製造に必要な治具なども構造が異なるたびに新たに準備が必要となるため、製造コストが高く付いてしまいます。

鉄道関連企業で構成された業界団体の社団法人鉄道車輛工業会では、設計の利便、品質改善、生産効率の向上などを目的に、鉄道車両と使用する部材の規格を定めており、相互直通運転の拡大や将来のワンマン運転などを勘案すると車両の主要な構造や性能、部品は標準化されていることが望ましいため、量産化による開発・製造コストの低減と製造の効率化が課題でした。

これらを背景として、2001年から大都市圏の地下鉄および相互直通運転を行っている民鉄の通勤・近郊電車の仕様を基礎とした標準車両の仕様の検討が開始され、社団法人日本鉄道車輛工業会が国土交通省や鉄道事業者、有識者も交えて、2003年に通勤・近郊電車の標準仕様ガイドラインが制定されました。規格は「JRIS R 1001」規格で、この規格は大都市圏の地下鉄線または近郊線における通勤・通学用に使用する電車の標準的な仕様を選定する際のガイドラインとして規定されており、ガイドラインであるため前頭部や内装などの設計は鉄道事業者が独自性を発揮するための自由度が設けられ、規格に全て準拠する義務はないため、必要な項目のみ設計に取り入れている場合もあります。

制定にあたって、営団地下鉄(現在の東京メトロ)と相互直通運転を行う東武鉄道・西武鉄道・東京急行電鉄(現在の東急電鉄)・小田急電鉄の意見を取り入れて決められ、車体は首都圏の20m車では規格に沿った寸法の採用が広がっており、首都圏を中心に車両規格の共通化が進んでいます。

このガイドラインに規定する仕様は、首都圏の代表的な車両での使用実績を集約する方法でまとめられており、寒冷地など使用環境の異なる地域の車両の仕様については、受渡当事者間の協定によって定めており、地方部においても車両規格の共通化が進んでいます。車両規格の共通化を図ると、車両製造費用を大幅に低減することが可能になるだけでなく、車両検修体制の効率化や相互直通運転を行っている鉄道事業者では、乗入れてくる他社の車両の取り扱いが容易になったりします。

今年で制定から20年が経ちますが、今後も通勤・近郊電車の標準仕様ガイドラインに準じて、色々な車両が開発されるでしょう。

参考文献

「標準化教育プログラム個別技術分野編 機械分野 第14章 鉄道分野における標準化と規格 -主として鉄道車両-」(社)日本鉄道車輌工業会宗像政美

「私鉄通勤型電車新図鑑 シリーズ化と個性」 鉄道ファン2016年11月号株式会社交友社2016年11月1日発行

鉄道まるわかり011通勤電車のすべて「旅と鉄道」編集部 株式会社天夢人2020年8月29日発行

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