A-trainとは日立製作所が提唱したアルミダブルスキン構体と完全自立型のモジュールインテリアを組み合わせて完成車両を作るシステムのことを言います。
A-train構体を活用し開発された車両
このシステムは労働人口の減少により、鉄道車両の製造に携わる熟練工の技術伝承が問題となっている中、少数の未熟練者でも鉄道車両の製造とメンテナンスが可能なシステムとして、日立製作所が開発した次世代アルミ車両システムです。
高精度のアルミダブルスキン構体に内装は別の場所で組み立てたモジュールインテリアを構体に設けられたマウンティングレールにボルト締結して組み立てます。モジュールは運転台、側引戸(ドア)、側窓、腰掛、吊手モジュール、天井モジュール、妻パネル、床下配管、床下機器、台車の目的別にまとめられています。最終的な艤装はボルト締結のため、従来の鉄道車両の製造工法と比較して部品点数や作業時間が大幅に減少し、現物合わせや修正も不要で未熟練者でも鉄道車両の製造が容易となりました。マウンティングレールを一体的に構成することにより、モジュールに変更が生じたときに必要なモジュールのみを変更して対応出来る利点があり、モジュールはボルトによる着脱のためメンテナンス性にも優れています。
A-trainでは構体にアルミ合金を使用しているため、多くの補強部材が必要となるシングルスキン(一枚板)構造ではなく断面がトラス形状で中空のダブルスキン(二枚板)構造を採用することで、部品点数の減少に加えて遮音性能の向上による快適な車内環境の実現と乗り心地の向上、車両の軽量化による省エネ効果も発揮しています。部材の接合方法においてFSW(摩擦撹拌接合)技術を導入し、アルミの融点以下で接合するため溶接と異なり熱によるひずみが小さく接合面も美しく仕上げることが出来るため、パテで表面を修正することなく塗装が行えると言ったメリットがあります。
東武鉄道60000系や東京メトロ10000系が採用例で、日立製作所では通勤形車両から特急形車両までA-trainの展開を積極的に図っており、A-trainを採用することによって製造に掛かるコストの削減や車両規格の共通化を図ることが可能なメリットがあるので、A-trainを活用して今後も多種多様な車両が開発されそうです。
参考文献
「最近の鉄道車両`A・train”」山田敏久・大場英資 日立評論2003年8月号日立評論社2003年8月発行
「私鉄通勤型電車新図鑑 シリーズ化と個性」 鉄道ファン2016年11月号株式会社交友社2016年11月1日発行
鉄道まるわかり011通勤電車のすべて「旅と鉄道」編集部 株式会社天夢人2020年8月29日発行