幻の気動車キハ391系

車両
キハ391系のカットモデル(敷地外から撮影)

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キハ391系は、ガスタービン車の研究と在来線の高速化を図るために、国鉄が開発した車両です。

ガスタービンはジェット機やヘリコプターの動力機関で、軍用艦艇や発電用でも使用されており、小型軽量で強力な出力を得ることが出来ます。これを鉄道に用いようとすると、燃費、騒音、出力制御にそれぞれ解決すべき問題点があり、一時期世界の鉄道が技術開発を競い合っていました。ガスタービン車両の研究は第二次世界大戦期から始まり1960年代までに欧米では営業用車両が出ていましたが、遅ればせながら日本でも1966年より国鉄と日本鉄道車輛工業会の共同研究が開始され、廃車になったキハ07系204号車にガスタービンを搭載して鉄道技術研究所(現在の鉄道総合技術研究所)で試験を実施しました。その後、1969年に車籍を復活させガスタービン試験車のキハ07系901号車として1970年2月から磐越東線で走行試験が行われましたが、試験をさらに深度化すべきという結論となり、新たな試験車両を新造することになったため、1971年に廃車になりました。

キハ07系での試験結果を踏まえ、軌道が脆弱で急勾配と急曲線の多い地方線区における高速車両の開発を目標とし、1972年にキハ391系が製造されました。大宮工場(現在の大宮総合車両センター)でM車(動力装置が搭載されている車両)とぎ装、新潟鉄工所でT車(付随車)の組み立てが行われ、車体は可能な限り軽量化と低重心化を図り、先頭車がアルミ製で中間車のみ銅製、重心を下げるために空調機器等も屋根上に搭載しておらず、車輪径も800mmと小さなもので、床面の高さも低いです。外観はキハ80系と似たようなデザインで塗装は国鉄特急色に準じた塗り分けとなっており、動力機関はIMI製IM100IRガスタービンエンジン(1050ps/21275r・p・m)を搭載し、気動車として初めて連接車、曲線通過時における乗り心地を向上するために車体振り子機構を採用しました。

最高速度は130Km/hで、曲線通過速度は現行より20Km/h以上向上を目標に、函館本線・石勝線・根室本線・石北本線・田沢湖線・北上線・紀勢本線・伯備線・予讃線・土讃線に導入が検討されていました。東北新幹線大宮ー盛岡間が開通した際に盛岡―秋田間で特急列車として運用することが検討されていたほか、国鉄北海道総局は1976年度から函館ー札幌間と札幌ー釧路間でキハ391系を運用した特急列車を運転し、北海道新幹線が開通するまでの間に函館本線や根室本線で運用しつつ開通後は、北海道新幹線に接続する幹線で運用する構想もありました。

川越線・伯備線・山陽本線・山陰本線・田沢湖線・奥羽本線・山田線で試運転が行われましたが、順調な結果を得ることが出来たものの1973年に起こった石油ショックによる原油価格の高騰や他の気動車と比較して燃費が悪かったり、騒音の問題を解決することが出来なかったため、休車となりました。ガスタービン車の研究は中止となり、長い間米子駅の構内に保管された後鉄道技術研究所(現在の鉄道総合技術研究所)での保管を経て、大宮工場(現在の大宮総合車両センター)へ回送され廃車になりました。

大宮工場(現在の大宮総合車両センター)では、動力機関であるガスタービンが撤去された状態で保管され、同工場で年に1回開催されるイベントの際には展示されることもありましたが、2015年に先頭車の一部を除いて解体され、そのカットモデルが大宮総合車両センターの入口付近に保存されています。

開発に成功していたら、気動車はガスタービン車が主流となり、在来線の高速化もさらに進み、秋田新幹線は別のルートで開通していたかもしれませんね。

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参考文献

「ガスタービン車の近況」堀田公郎(国鉄・車両設計事務所動力車補佐) 鉄道ジャーナル1973年5月号株式会社鉄道ジャーナル社1973年5月発行

「ガスタービン動車今後の見通し」鉄道工場1972年6月号レールウェー・システム・リサーチ1972年2月発行

仙台鉄道管理局60年史 日本国有鉄道仙台鉄道管理局1979年5月発行

「キハ391前面のみ展示される」鉄道ピクトリアル2015年6月号株式会社電気車研究会 鉄道図書刊行会2015年6月1日発行

「時代の狭間に咲いた花、キハ391系ガスタービン車」日本国有鉄道研究家blackcatの鉄道技術昔話URL(https://blackcatk.exblog.jp/237154724/)2023年3月22日参照

「国鉄旅客輸送今昔22(ガスタービン車編)」鉄道ジャーナリスト加藤好哲(blackcat)blog URL(https://ameblo.jp/blackcat-kat/entry-11954179417.html)2023年3月22日参照

「国鉄気動車略史 最終回 自主開発断念へ」芝川三郎 鉄道ジャーナル2021年2月号株式会社鉄道ジャーナル社2021年2月1日発行

※写真は敷地外から撮影

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