JR北海道は、営業区域全域が降雪地帯で、冬に強い鉄道を目指すために、様々な対策が行われていますが、車両の窓ガラスが破損するのを防止するために、車両の窓ガラスをポリカ―ボネート板で覆っています。ポリカ―ボネートは破損に強い素材ではありますが、JR他社の車両の窓ガラスとは違い、柔らかい素材であることから細かな傷が付きやすく、細かな傷が曇りや汚れのように見えてしまうので、鱗状痕の改善を図ることにより、ポリカ―ボネートによる汚れは順次、改善されるそうです。
いったん付いてしまった傷は、修復することが難しいため、透過性の低下が目立つ車両を最優先に順次、窓の交換作業を進める方針で、過去に列車の走行中、車両の床下に付着した雪塊が落下し、その弾みで、レールに敷き詰めたバラストが跳ね上がり、車両の窓ガラスを割って、利用者がケガをするという事象がありました。バラストが窓ガラスに当たる事象は、国鉄時代にもありましたが、それほどの破壊力を持ったバラストは、そのときが初めてで、列車の高速化が進み、氷塊が落下したことにより、バラストに強い力が加わったことが、原因の一つと考えられています。JR北海道では、その事象をきっかけに、客室の窓と床下の機器に対し、徹底した事故防止対策を講じ、時速120㎞/h以上で走行する列車の客室の窓については、全て耐衝撃性・透明性に優れたプラスチック素材のポリカ―ボネートを設置し、床下は、氷塊が付きにくいように、床下機器を覆うカバーを取り付けています。
新型車両には、ガラスとポリカ―ボネートの複層構造になった窓が標準装備されており、2007年に就役した特急カムイで運用している789系1000番代は、ポリカ―ボネート板で覆った窓と床下機器カバーの他に、新幹線車両の技術を応用した押さえシリンダー式ドアを採用しており、寒冷地ならではの事故防止対策を完備しています。バラストが跳ね上がるのを防止するために、トンネル内や駅構内および踏切には、バラストネットも設置されており、ポリカ―ボネート板で覆った窓は、約690両に搭載されていますが、乗務員の安全を確保するために、現在は、ポリカ―ボネート樹脂を加工し、電気を通すことで発熱するクリアヒート(発熱ポリカ)が、車両の前面ガラスに一部採用されています。
気動車は、電車と違い床下に動力機関(エンジン)などの発熱源があり、付着した雪が解けて落ちるため、床下機器カバーは搭載されていませんが、道床安定剤の散布により、トンネル内とスノーシェッド内のバラストの固定化を行った線区もあり、ポリカ―ボネートによる汚れが改善されることによって、さらに楽しく、北海道を列車で旅行することが出来そうですね。
参考文献
「降積雪特集 北海道旅客鉄道 JR北海道の在来線冬期体制」佐藤秀紀(北海道旅客鉄道(株)・鉄道事業本部企画室主席) 運転協会誌2019年11月号一般社団法人日本鉄道運転協会2019年11月1日発行