東武鉄道70090系は70000系をベースに設計されており、東上線のTJライナーで運用されている50090系と同様にロングシートとクロスシートを転換させることが可能な通勤車両で、今年で就役から3年が経ちます。
70000系は計画では22編成が導入されることになっていましたが、実際に製造されたのは18編成で残りの4編成については70090系として製造されることとなり、「移動に憩いのひとときを」をコンセプトに「座る」ことへのさらなる付加価値を追求しました。THライナーとして運用する際は座席をクロスシートとすることで通勤・通学時に着席を可能にして、プライベートな空間を提供して快適な移動を提供し、快適な移動を実現しました。ロングシートの状態においてもこれまで以上にお客様の快適な足となるよう設計されており、70000系と相互直通運転先である東京メトロの13000系と仕様の共通化を図ることで、車内設備やお客様へのご案内の統一と乗務員の操作性の共通化を図っています。
台車は、曲線通過時おける走行安全性能の向上とレールとフランジの接触により発生するキシリ音を低減させるために方軸操舵台車を搭載し、主電動機(モーター)には永久磁石同期電動機(PMSM)を載しており、制御装置にはPMSMに対応した主電動機(モーター)個別制御のVVVFインバータ装置が搭載されています。車両情報制御装置には東京メトロで実績のあるTISに東武鉄道仕様の機能を盛り込んだT-TIS(Tobu-Train Information System)を搭載し、車上データ有効活用システムRemote(Remotemonitoring of train to use effectively)も搭載しているほか、集電装置(パンタグラフ)には降雪時に舟体等への着雪を運転台でのスイッチ操作により、増圧上昇と下降動作を連続して行うことで着雪を振り落とす機構を搭載しています。
THライナーとして運用する車両ではありますが、2020年3月20日から日比谷線直通列車の各駅停車として営業運転を開始しており、2020年6月6日に行われたダイヤ改正で東武伊勢崎線・スカイツリーラインから東京メトロ日比谷線へ乗り入れる座席指定制列車のTHライナーとして久喜―霞ヶ関間で営業運転を開始し、THライナーだけでなく日比谷線直通列車の各駅停車としても運用されています。
東武鉄道と東京メトロとの相互直通運転における座席指定制列車の運転はこの車両が初めてで、就役から今年で3年が経ちますが、東武鉄道の車両の中でも独特なデザインを放つ車両ですね。
参考文献
「東武70090系営業運転開始」4号車の5号車寄りURL(https://4gousya.net/forums/post/東武70090系営業運転開始)2023年5月17日参照
「新型通勤車両70090型 ロング /クロスシート転換車両の概要について」東武鉄道株式会社鉄道事業本部車両部車両企画課久保田諭 SUBWAY日本地下鉄協会報第226号一般社団法人日本地下鉄協会2020年8月28日発行
「電鉄車両動向2021 07 東武鉄道」柴田東吾 鉄道ジャーナル2021年3月号株式会社鉄道ジャーナル社2021年3月1日発行