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JR東日本とJR北海道の経営統合

経営
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函館線大沼駅構内貨物列車脱線事故が発生してから、今年で10年が経ちましたが、JR北海道の経営の立て直しを図るために、JR東日本とJR北海道の経営統合が、政府で検討されています。

旧国鉄は、高度経済成長期における輸送需要に対応出来なかったため、幹線の複線化と電化、新線の建設、新製車両の導入、特急列車の増発、リゾート列車の運転など増収に向けた施策を行ったものの、国鉄の赤字は雪だるま式に膨らみ社会問題となり、1982年度に1日あたりの赤字額が57億円に膨らみ、破産状況を迎えてしまいました。経営状況を改善するために国鉄当局は業務の見直しを計画しましたが、これに反対した労働組合は何度もストライキを決行したため鉄道離れに拍車が掛かり、貨物輸送が大幅に減少し荷物輸送と郵便輸送が廃止となり、利用者が少ない地方交通線の廃止が行われました。

北海道内の線区については、輸送人員が少ないため、JR北海道の経営状況は発足当初から極めて厳しいものになることが予想されましたが、効果的で地域の実情に即した経営が出来る経営形態に改めた上で国鉄を再生するために、北海道内と青森県の一部についてはJR北海道が運営することになり、JR北海道は1987年4月1日に大手私鉄型の鉄道会社として発足しました。国鉄時代には、厳しい制約があった関連事業については、幅広い分野への進出が可能となり、民営化後の人気商品としてリゾート列車が苗穂工場で製作され、利便性向上のために新造車両の導入と石勝線・根室本線・宗谷本線の高速化を図り、技術開発も積極的に行われていました。

しかし、2011年5月27日に石勝線清風山信号場構内にある第一ニニウトンネル内にて、石勝線列車脱線火災事故が発生しました。特急スーパーおおぞら14号(4014D)として運用中のキハ283系が清風山信号場付近を走行中に脱線し、第一ニニウトンネル内に停車後、火災が発生しました。これにより、車両は全焼し、旅客78名と車掌1名が負傷し、その後も車両トラブルが相次ぎ、これらのトラブルの原因は車両の酷使が原因であったため、最高運転速度と運転本数の見直しと車両検修体制の強化を図るために、キハ261系の車体傾斜制御装置の使用が停止され、2013年11月から減速運転の措置を行い、経営状況が悪化してしまいました。

大沼駅

2013年9月19日には、函館本線大沼駅構内にて、函館線大沼駅構内貨物列車脱線事故が発生し、線路検査データの改ざんが発覚しました。最大労組の北海道旅客鉄道労働組合(JR北海道労組)の活動が、先鋭化している問題もあり、労使癒着や省令により乗務員は、乗務前にアルコール検査を行うことが義務付けられているにも関わらず、アルコール検査を拒否して問題になったことがありました。JR東日本でも、最大労組の東日本旅客鉄道労働組合(JR東労組)の活動が先鋭化している問題があり、2018年に組合員の基本給を一律定額のベースアップ(ベア)を将来にわたり実施するよう要求し、ストライキを計画していました。列車を運休しない形で行うことになっていましたが、会社と厚生労働省に予告を出した5日後に解除され、組合員が大量に脱退しました。国鉄時代に、業務の見直しや民営化に反対してストライキを何度も繰り返し、利用者の信頼を失った過去があったため、ストライキに反対する声もあり、JR東日本は、労使協調を掲げたJR東労組との労使共同宣言を失効しました。

JR東日本は、人口の多い首都圏に路線を持っているので、ローカル線の維持費用は首都圏の線区で得た収入で賄っていたりもしますが、JR北海道の場合、千歳線を除く全ての線区が赤字で、2016年に「当社単独では維持することが困難な線区」を発表し、この中には、特急列車が運転されている石北本線と宗谷本線も含まれており、今年の3月に留萌本線石狩沼田ー留萌間が廃止になっています。乗降人員の少ない駅の廃止も行われており、北海道は秘境駅が多いことで有名なので、秘境駅を観光資源として活用するために、日本一の秘境駅として有名な室蘭本線小幌駅の場合、2015年に廃止が検討されましたが、自治体が維持管理を行う形で存続しています。

2016年3月26日に、北海道新幹線新青森―新函館北斗間が開通し、新函館北斗ー札幌間の延伸が2031年に予定されており、現在、工事が進められています。JR東日本も、利用者が少ない線区の経営情報を昨年の夏に公表し、この中には、国鉄時代に廃止が検討された線区も含まれていましたが、利用の促進に向けた取り組みを行うことになっている線区もあります。

JR東日本とJR北海道の間では、きっぷの予約をインターネットで行うことが出来るサービスであるJR東日本のえきねっとが、JR北海道でも利用出来るようになったり、線路・信号・電力の状態の検査を行うJR東日本の検測車をJR北海道へ貸し出して、JR北海道管内の線路・信号・電力の状態の検査を行っています。

その他にも、キハ40系を置き換えるために、開発された電気式気動車のJR東日本GVーE400形とJR北海道H100形が、共通設計で製造されたり、今後は、JR東日本で導入が進んでいる線路設備モニタリング装置の導入が、JR北海道でも検討されています。

JR北海道とJR東日本の経営統合は、JR北海道だけでなくJR東日本にとってもメリットがあり、麻生太郎前財務大臣は、JR北海道とJR東日本の経営統合は一つのアイデアとしていますが、これに対し、JR東日本の富田哲郎前社長は、JR北海道との経営統合は現実的でないと否定的な考えを示しています。

JR北海道は、2019年4月に北海道新幹線新函館北斗ー札幌間延伸を契機として、JR北海道グループ長期経営ビジョンを発表しました。千歳線の改良や在来線の駅にもホームドアを設置することが盛り込まれていますが、乗降人員の少ない駅の廃止が進む中、千歳線上野幌―北広島間には新駅が設置されることになっており、JR北海道が増収を図るには、都市間輸送を強化し、函館本線・石勝線・根室本線・宗谷本線の主要4線の高速化を図ることが重要なので、今後、再び130Km/hでの運転が可能になったら、利便性の向上と地域の活性化を図るためにも、130Km/hでの運転が復活した方が良いと思います。経営統合するとしたら、時期はいつになるのかは公表されていませんが、JR東日本とJR北海道の今後に注目したいです。

参考文献

走れ!ダーウィン JR北海道と柿沼博彦物語 綱島洋一中西出版株式会社2009年4月20日発行

車掌の仕事 田中和夫北海道新聞社2009年10月1日発行

「窮地に追い込まれたJR北海道」佐藤信之鉄道ジャーナル2019年2月号株式会社鉄道ジャーナル社2019年2月1日発行

「JR北海道グループ長期経営ビジョン」等について 2019年4月9日北海道旅客鉄道株式会社

暴君 新左翼・松崎明に支配されたJR秘史 牧久小学館2019年4月23日発行

「ご利用の少ない線区の経営情報を開示します」東日本旅客鉄道株式会社2022年7月28日のニュースリリース

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